「顧客体験の向上」「ダイバーシティ」「グローバル化」によって、真の「カスタマー・セントリシティ」を実現する(代表 樋口龍 × CBO 相良奈美香)
『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ)の著者であり、行動科学コンサルタントとして世界各地で行動科学に基づくコンサルティングを行っている相良奈美香が、執行役員CBO(Chief Behavioral Officer)としてGA technologies(GAテクノロジーズ)に参画してから4カ月。代表取締役社長 CEOの樋口龍と共に、あらためて「カスタマー・セントリシティ」の重要性やその実現に向けた取り組みについて話し合った。
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「カスタマー・セントリシティ」を実現するために役立つ「行動経済学」の知見
ー ご著書の売れ行きが大変好調だとお聞きしております
相良奈美香(以下、相良):
刊行当初は、1万部を突破できたらと思っていましたが、先日出版社から10万部を超えたと聞きました。またAmazonの書籍総合ランキングでも4位を獲得したり、アジア各国で翻訳されたりということで、多くの読者の方に読んでいただいていることを大変嬉しく思っております。
ー 相良さんが執行役員CBOとして当社にジョインされて4ヶ月。GAテクノロジーズ(以下、GA)への印象は、何か変化はありましたか?
相良:
それが、入社前に持った印象と全く変わってないんです。むしろ、想像以上に熱い会社でしたね。メンバー皆が本気で「お客様の長期的資産形成のお手伝いをしたい」と考えているし、本気で「世界のトップ企業になる」と思っている。そしてそのビジョンに向かって、愚直に行動を積み重ねている。そのことにとても驚きました。
ー 執行役員就任時に取り組まれたいとおっしゃっていた「カスタマー・セントリシティ」について、改めてその基本的な考え方についてお話しください
相良:
カスタマー・セントリシティは「お客様の長期的な満足度が、企業の長期的な成長につながる」という概念ですが、ポイントは次の2つです
一つ目は、短期ではなく長期的な顧客満足度を目指すということ。ネット不動産投資サービスの「RENOSY」でいえば、「物件を売って終わり」ではなく、物件を購入していただいてから以降も、そのお客様のかけがえのないパートナーとして、管理や売却なども見通しながら寄り添い続ける必要があります。
もう一つ大事なのが、「徹底的な顧客視点」に立つということです。これは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、実は企業は、お客様に提供したいサービスを提供したり、伝えたい情報を伝えています。どうしても企業側の視点で、お客様を理解しようとしてしまうのです。そうではなく、あくまでお客様にとって必要なサービス、必要な情報を提供することが大切です。
そしてその際に、役に立つのが「行動経済学」です。なぜなら「行動経済学」は、人の非合理性を理解した上で、その意思決定のメカニズムを解明する学問であり、お客様の視点に立つ際には、意志決定における心理や行動への理解が必要不可欠だからです。
例えば、人は、長期的資産形成の必要性を認識していても、「現状維持バイアス」や「双曲割引モデル」が働いて、そのための行動にまでに至らないことが多々あります。常に自分にとってよい選択をするとは限らないのです。我々はそうした人間の非合理性を理解した上で、商品やサービス、アプリなどの開発・改善に務める必要があります。
樋口龍(以下、樋口):
ちなみに、相良さんと言えば「行動経済学」と思う人がほとんどだと思いますが、僕たちの会話で「行動経済学」という言葉が出てくることはほとんどありません。常に「カスタマー・セントリシティを実現するには」という視点で、「顧客にとってどうなのか」という会話がほとんどです。
各現場の小さな慣習・文化を一つひとつ変えていくことから
ー なるほど。「行動経済学」は、「カスタマー・セントリシティ」を実現するための一つのツールという認識なのですね。では相良さんが執行役員として参画されてから、具体的にどういったことに取り組んでいるのですか?
樋口:
とにかく相良さんには顧客に対する言葉遣いや、発言の仕方といった基本的なことから、社内環境・社内制度に関するものまでさまざまな指摘をいただき、それを受けて多くのことを抜本的に変えていっているところです。「カスタマー・セントリシティ」という旗だけ掲げ、小手先だけで対応したとしても、本質的な改善には繋がらないと考えているからです。
相良:
本当の意味で「カスタマー・セントリシティ」を実現しようと思ったら、単にミーティングに顔を出して「顧客視点を大事にしましょうね」と話をするだけでは意味がありません。「お客様にとって本当に必要なサービス、情報とは何なのか」という視点で、各現場の小さな慣習やカルチャーの一つひとつから変えていくことが重要です。
ですから私自身もなるべく現場に入って、メンバーの方たちに向けて、マインドセットや意思決定の仕方などにおいて「それは顧客視点に立ってると言える?」という問いを投げかけたり、顧客向けの様々な資料をレビューして「これって本当にお客様にとって必要な情報?」「これは単なる会社の自己満足じゃない?」といった指摘をしているところです。
社内におけるダイバーシティとグローバル化が、ひいては顧客満足度の向上につながる
樋口:
「顧客体験の向上」以外で特に力を入れているのが、社内におけるダイバーシティとグローバル化です。
一見「カスタマー・セントリシティ」とは、関係がないように思えるかもしれません。しかし社内に多様なバックボーンを持った人材がいることは、長い目で見たときに、必ず顧客の満足度に繋がると考えています。現在社内におけるDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進のため、執行役員をリーダーとしたワーキンググループを設置し、活動が始まったところです。
もう一つはグローバル化です。現在当社は海外の複数の国で事業を展開していますが、さらなるグローバル化を見据えたときに、言語や文化の異なるお客様に対しても素晴らしい顧客体験を提供するため、今の時点から取り組まなければいけないことは多岐にわたっています。
例えば、和製英語の使い方。我々の行動指針は以前は「GA GROUP SPIRIT」、略して「GAGS」と表記していました。これは英語ではあまりよくないニュアンスになってしまいます。ですから「GA GROUP SPIRIT」という言葉も「GA VALUES」という言葉に変えました。
そのほかにも、例えば会議の持ち方や場のセッティングの仕方などについても、グローバル化を見据えながら、細かい改善を積み重ねているところです。
相良:
お客様とのコミュニケーションに関して言えば、特に日本は、「情報オーバーロード」に関する課題が大きいと認識しています。企業サイトやアプリに掲載している情報が多過ぎるのです。やはりそれも会社目線になっているからであり、「あれもこれも大切だから伝えよう」となってしまっているのだと思います。
企業側にはそうした膨大な情報を一瞬で見て理解するだけの知識があり、掲載までに何度も何度もその情報に触れているでしょう。しかし初めてサイトに来たお客様にそれだけの情報を与えても、逆に判断が難しくなってしまい、結果的に頭の中に何も残らなくなってしまいます。そうするといくら企業側が頑張ってもコミュニケーションの意味自体がなくなってしまいますし、お客様との貴重な接点が失われてしまいます。
特に、不動産投資というものは、人生において本当に大事な、インパクトのある意思決定になりますから、お客様にとって、本当に必要な情報を、必要なタイミングで提供するためには、どのような形がいいのか。お客様の意思決定におけるストレスをできる限り減らすためのアプリやサイトの見直しを行っているところです。
GAの変化を厭わない姿勢こそが、「カスタマー・セントリシティ」を実現する上での最大の強み
樋口:
とにかく今は、基本的・抜本的な改善をどれだけ積み重ねることができるかが重要だと思っています。現場目線でいうとまだ変化を感じにくいかもしれませんが、経営者目線では思考や考え方も含めて、ここ数ヶ月で本当に大小様々なことが変わってきています。
相良:
その変化を厭わない姿勢こそが、GAの大きな強みです。私はこれまで国内外を含めて非常に多くの企業のコンサルティングを行ってきましたが、どれだけ「行動経済学」や「顧客満足度の向上」に関する知識を身につけたとしても、「大きな変化に前向きに取り組めるか」ということが実は一番大事だと考えています。「自分たちは変わっていかなければいけない」ということを理解していたとしても、現状維持バイアスのため、実際に変わっていける企業というのは実は本当に少ないと感じています。課題を見つけてソリューションを提案しても「ありがとうございました」で終わってしまうことも少なくありません。
その中でGAは、成長のために「これくらい変えるかな」という予想をいつも大幅に超えてきます。「え、そんなに変えるの?」と驚くこともしばしばです。樋口さんをはじめ、多くのメンバーが、変化を厭わず、すぐに行動にうつす姿勢というのは、「カスタマー・セントリシティ」の実現を目指す上で、非常に大きな強みだと感じています。
樋口:
創業して10年がたった今、このタイミングで相良さんにサポートしていただいて良かったと心から思っています。あと5年先だったら、組織が重くなり過ぎてしまい、基本的・抜本的なことをそこから変えていくのは正直難しかったと思います。
「顧客体験の向上」「カスタマー・セントリシティの実現」は、多くの企業が重要課題として掲げているテーマだと思いますが、我々は本気でそこにコミットし、唯一無二のサービスを展開する唯一無二の企業として、「世界のトップ」に向かって、変革と挑戦を繰り返していきます。
撮影:今井淳史
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