顧客視点での「ブランドをつくる」ために、CCOへ(代表 樋口龍 ✖️ CCO 篠原誠)
ネット不動産投資サービス「RENOSY」では、お客様にとってより「安心・簡単・最適」なサービスであることを示すために、ブランドビジョンおよびブランドコンセプトを制定。その発表と同時に、日本を代表するクリエイティブ・ディレクターの篠原誠が、CCO( Chief Creative Officer )に就任した。篠原の就任までの経緯やサービスブランドに関する想いについて、この発表に至るまでに対話を重ねてきた、代表の樋口と語り合った。
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受けたオファーにワクワクし、CCO( Chief Creative Officer )へ
ー CCOに就任することになった経緯について教えてください
篠原誠(以下、篠原):
長年クリエイティブディレクターとして広告業界に携わり、多忙な日々を送ってきました。40歳頃から、「50歳になったら引き受けている仕事を一旦全部やめて、充電期間を設けよう」と決めていました。ですから(50歳になった)2024年から新規の仕事は一切受けず、海外の様々な国に長期滞在しながら、今後についてゆっくり考える予定でした。
電通時代の後輩から連絡があったのは、3カ国目となるベトナムに滞在していたときです。「GAテクノロジーズの知り合いが(自分と)連絡を取りたがっている」と言われました。ですからその時は「相談くらいなら可能だが、新規の仕事は受けられない」とお答えしました。
その後GAテクノロジーズから正式に連絡がきて、樋口さんをはじめメンバーの方々と一度リモートでお会いすることになりました。当初は「きちんとお断りしよう」と思っていたのですが、そのお話が非常に面白かったんです。樋口さん自身と、受けたオファーにワクワクした。それが今回引き受けた一番大きな理由です。
ー 樋口さんのどういった部分に、面白さを感じたのでしょう?
篠原:
一歩目の速さです。とにかく初動がめちゃくちゃ速い。また新しいモノやコトに対して壁がなく、非常にニュートラルな人という印象を持ちました。年や経験を重ねると、ニュートラルでいるって難しいじゃないですか。特に成功体験があるといろいろな思いや考えが頭をよぎって動きが止まり、結果何かを変えることが難しくなる。でも、樋口さんにはそういった印象が全くなく、常にあらゆることを貪欲に吸収し、いいと思ったらすぐに動く人なのだなと感じました。
一点、僕が気がかりだったのは「自分ができること」と「期待されていること」に、ギャップがないかということでした。ここが一致していなければ、仕事を引き受けてはいけないと思っていたのですが、2回目にお話した際に自分に期待されていることがわかり「それなら自分にやれそうだ」と感じたのでお引き受けすることにしました。
ー 樋口さんは、なぜ篠原さんにCCO就任を依頼しようと思われたんですか?
樋口龍(以下、樋口):
1年以上前から当社の、特に「RENOSY」のマーケティングやブランディングに対して、強い課題感を持っていました。
日本では不動産投資に対して「リスクが高そう」「難しそう」といったマイナスイメージが少なからずあると感じています。そこに対して、これまでブランドコンセプトの見直しや課題の整理を体系的にやってきました。けれど、それでもまだ「今のままでは、お客様に選んでいただけるサービスになっていない」という課題感が強く残り続けていました。
そんな時に、ファーストリテイリングのこれまでのあゆみを取り上げたノンフィクション『ユニクロ』(日経BP社、杉本貴司)を読みました。柳井正さんが、ユニクロをグローバルブランドまで育て上げたプロセスが書かれてある本です。そこに、ユニクロのクリエイティブ・ディレクターを務めた佐藤可士和さんとの関わりについても書かれていました。ブランドの強み、弱みは何か。グローバルブランドになるための、戦略的なクリエイティブディレクションとは何か。経営とクリエイティブが一体になってそうした課題に取り組んでいる姿を読み「これだ」と思いました。
すぐに、当社でもトップクリエイターの方にブランディングをお願いしたいと考えました。複数の方のお名前が挙がる中で、もちろん篠原さんの名前もありました。それぞれの方の実績や取材記事などにも目を通す中で、過去のインタビュー記事を読んだ瞬間に、絶対に篠原さんにお願いしようと決めました。社内の担当者からは「現在は新規のお仕事はされていないので、ほぼ無理です」と言われましたが、絶対に「この人しかいない」と思っていました。
ー それは、どのような内容の記事だったのでしょう?
樋口:
篠原さんの仕事に対するポリシーや、クリエイティブに対する思いが語られたものですが、そこには明確な顧客視点があり、こういったクリエイターはほかにいないと感じました。ですから仕事を受けないとお聞きしても、引き受けていただきたいと思っていました。
先ほどもあったように、顧客視点でのブランディングについては最重要課題として取り組んできたつもりでしたが、篠原さんと数回お話しただけでそれが不十分であることがわかりましたし、顧客視点という観点からもブランディングという観点からも、篠原さんは我々の数十歩先を行っている方だと感じました。当初は週に1回程度定期的にミーティングを設けていろいろアドバイスをしていただこうと思っていましたが、全般的に関わっていただきたいと思い、今回CCOをお願いさせていただきました。
ー 具体的に篠原さんにはどのような領域に携わっていただくのでしょう?
樋口:
まさにブランディング領域全般です。顧客目線でのサービスを徹底するため、あらゆる顧客接点においてマーケティングやデザイン、顧客体験など様々な部署に携わっていただきます。
ー 篠原さんは、実際に関わって、RENOSYや社内のメンバーにどのような印象を持たれていますか?
篠原:
RENOSYは不動産投資業界では圧倒的なNO.1の位置にあり、ここからさらにその差は広がると思っています。けれど業界問わず世の中のすべてのブランドと並べたときに、そこまで認知は広がっているとは言えません。不動産投資自体に対しても、日本ではまだネガティブなイメージがあり、そういう意味ではブランドとして本来あるべきポジションに対してまだ到達していない状態だと言えます。
また、社内のメンバーについては、すごくモチベーションが高いことに驚きました。実年齢ではなく、気持ちが若くてすごく素直。組織としても雰囲気がよく、樋口さんをはじめ皆フットワークがとても軽くて、意思決定から行動に起こすことが非常に速いのが印象的です。
”アセットプランナー”という職種こそ、RENOSYそのもの
ー 改めて、篠原さんの考える「ブランディングとは?」をお聞かせください
篠原:
企業は、あるサービス・商品に名前をつけると「ブランドができた」と思ってしまいますが、誰にも知られていなければそれはブランドとは言えません。
お客様の心の中に、その商品やサービスに関する“思い出の小箱”ができて、初めてその商品は「ブランド」になります。そのお客様の心の中に生まれた箱の中にポジティブなイメージを入れてもらう作業が「ブランディング」です。
ブランドは、商品を買ったり、サービスを利用したりした人の中だけにできるのではありません。商品を買わなかったり、サービスを利用していなかったりする人の中にもブランドはできます。ですから顧客接点に関わるすべての人がやらなければいけないのは、“顧客”を作ることではなく、それぞれの“思い出の小箱”にポジティブなイメージを入れてもらえるよう“ファン”を作ることです。
ファンを作るために最も大切なのが、顧客視点です。そういう意味で最優先課題は、実際にお客様と対面するAsset Planner(アセットプランナー)(※)だと感じました。お客様から見たら、その人そのものがRENOSYだからです。ですからRENOSYのアセットプランナーの方々には「自分は会社を代表するブランドなんだ」とプライドを持っていただきたいです。
樋口:
篠原さんから「ブランドをつくる」ということがどれだけ大変で 、何を変えていく必要があるのかということを教えていただき、直すべきところを直し、変えるべきところを一から変えていっている段階です。それは僕やアセットプランナーをはじめとするメンバーの考え方や取り組み方もそうですし、仕組みもそうです。ブランドをつくるということに対してできること、変えなければいけないことを徹底的にリストアップし、それを一つひとつ実行しているところです。
篠原:
僕自身が関わるようになり、不動産投資について知れば知るほど、その人やその人の家族の人生を、より豊かにする可能性があるものだと感じています。また海外では不動産投資という選択肢が当たり前に存在しているとも感じました。
この日本という社会の中で不動産投資は「あやしい」とか「難しい」とネガティブな文脈で語られることが多いですが、そうしたイメージを少しでも変えていくことができれば、日本はもっと幸せな国になるのではないかと思っています。
また、GAテクノロジーズは、外部の人が見ると不動産会社に見えているかもしれませんが、この会社はテックの会社です。今後のビジョンを聞いていると本気でそこを目指し、一歩一歩着実に歩みを進めています。そこが非常に面白いと思います。今後どういったブランド、企業になっていくのか、当事者の1人として非常にワクワクしています。
(※)Asset Planner(アセットプランナー):ネット不動産投資サービス「RENOSY」において、資産形成を成功に導くため、共に考え、伴走するパートナーです。
撮影:今井淳史
※本記事は作成時点での情報を参考にしております。最新の情報と異なる場合がございますので、ご了承ください。