GAテクノロジーズが、独自データの活用によって描く未来の不動産業界 「経営×データ」を推し進めるGAテクノロジーズの本当の強みとは? (代表 樋口龍×CDO 奥村純)
先日、株式会社マーキュリーリアルテックイノベーターのグループ入りを発表したGA technologies (GAテクノロジーズ)。今、多くの企業が「データドリブン経営」を目指す中、GAテクノロジーズはデータ戦略に関してどのような未来像を持っているのか。代表取締役 社長執行役員 CEOの樋口龍と、執行役員 CDO(Chief Data Officer)の奧村純が、グループ全体の今後のデータ戦略や、GAテクノロジーズの強み、描く世界観について語り合った。
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独自のデータを使った新たなインフラによって、不動産業界の課題を解決する
ー 先日、GAテクノロジーズは、マーキュリーリアルテックイノベーターのグループ入りを発表しました。改めて、その狙いと今後のデータ戦略を教えてください
樋口龍(以下、樋口):
今回当社のグループに参画したマーキュリーリアルテックイノベーター(以下、マーキュリー)は、主に、不動産ビックデータと最新のテクノロジーを融合した、不動産マーケティングプラットフォーム「Realnet」を運営している企業です。
具体的な事業としては、30年以上前から、首都圏・関西圏・東海圏の三大都市圏における新築分譲マンションのパンフレットを収集・蓄積し、それをデータベース化して、マンションディベロッパーや仲介業者に不動産マーケティングシステムとして提供しています。過去に遡ってこうした物件データを取得することは困難なので、非常に独自性の高い物件データを保有していると言えます。
一方、GAテクノロジーズが展開するネット不動産投資サービスブランド「RENOSY」は、不動産投資の検討・購⼊・管理・売却まで、テクノロジーの活⽤によりオンライン中⼼で提供しているサービスです。創業10年を超えた現在、不動産投資におけるマーケットシェアの約10%を見込むまでになり、中古不動産の売買成約データを取得してきました。(※1)同じくグループ会社の「ITANDI」でも、日本の賃貸申込約240万件のうち107万件の申込を獲得し(※2)、市場の約40%の賃貸不動産成約データを取得するに至っています。(※3)
マーキュリーの参画により、GAテクノロジーズグループが保有してきた独自性の高い成約データに、マーキュリーの保有する不動産データが加わり、グループとして保有するデータの質と量が一気に広がりました。今後はこれら貴重なデータを掛け合わせて、to C、to Bに向けた新たなインフラを構築して、不動産業界全体の変革を目指していきたいと考えています。
ー データという観点から見たとき、不動産業界には現状どのような課題があるのでしょう?
奧村純(以下、奧村):
現在国内には、ディベロッパー、賃貸仲介会社、売買仲介会社、管理会社など12万社の不動産関連企業がありますが、それぞれで不動産関連情報を保有している状態で、全データを網羅するようなデータベースは存在していません。それぞれが保有するデータも情報の鮮度や粒度にばらつきがあります。そのため、例えばある管理会社が物件を賃貸に出すとなった場合、10社を超える仲介会社が個別で物件の写真を撮りに来る、といった非効率的なことが起こります。業界全体で見たときに多くの重複作業やムダが発生している状況です。
樋口:
それに対し、現在国土交通省は「不動産ID」の整備の検討を始めています(※4)。
民間事業者である我々も、グループで保有する独自のデータを活用して、こうした課題を解決したいと考えています。
マーキュリーのグループ入りにより、業界のあらゆるステークホルダーのニーズに応えるインフラの構築が可能に
ー マーキュリーのグループ参画によって、保有するデータの質と量が広がったということですが、その具体的な中味について教えてください
奧村:
例えば「不動産データ」というカテゴリーで見た場合、日本のマンションの総数は約700万戸と言われています。そのうち、これまでのGAテクノロジーズで取得していたデータは、約63万戸、カバレッジですと約9%程度でした。今回マーキュリーがジョインしたことで、これが342万戸に増え、日本のマンション総数の50%弱まで広げることができました。このカバレッジは、今後さらに広がっていく見込みです。
また、先ほど樋口さんがおっしゃっていたように、GAテクノロジーズグループは、RENOSYやITANDIのサービスにおいて、非常に独自性の高いデータを取得してきています。
ー 「独自性の高い成約データ」について、もう少し詳しく教えてください
樋口:
物件には「募集データ」と「成約データ」があります。「募集データ」に関しては、to C向けに不動産情報サイトを運営している企業のように、膨大なデータを保有している企業は数多くあります。
ただ、実際のファクトとなるのは、物件の契約が成立した際の「成約データ」です。具体的に言うと「どのくらいの家賃や価格で決まったか」「どれくらいの募集期間で成約に至ったか」というもので、この「成約データ」を保有している事業者は、国も含めてほとんどありません。だからこそ現在GAテクノロジーズが保有している成約データは、他にない、独自性の高いものなのです。
データを活かし切れるテクノロジーと、戦略があることこそが、GAテクノロジーズの本当の強み
奧村:
保有するデータの数がさらに増えたということだけでなく、マーキュリーの参画によって、 GAテクノロジーズグループというのは、開発・分譲から売買仲介、賃貸仲介、賃貸管理、投資・運用とあらゆる不動産領域の業態に対して、データ取得の接点を持てるようになりました。これだけの幅のデータがそろうことで、不動産企業、購入検討者だけでなく、金融機関や不動産鑑定士など不動産業界におけるさまざまなステークホルダーのニーズに応えるプラットフォームを構築することができるのではないかと考えています。
ただ、GAテクノロジーズグループの真の強みは、独自性の高いデータを大量に保有しているというだけでなく、そのデータを事業に活かし切るためのテクノロジーと戦略がある、というところだと思っています。
ー データは単に「保有しているだけ」ではだめだということですね
奧村:
データは「あればいい」というものではありません。実際に、事業に活用できるところまで持っていくのは、多くの地道なプロセスと戦略が必要です。
具体的には、「データをどのような出口で使うか」「データを会社の資産としてどのように維持管理するか」という戦略、また「M&Aも含めて、保有していないデータをどのように集めていくか」というデータ取得戦略が極めて重要になります。そこまでの解像度でデータ戦略を実現している事業会社というのは、現状ほぼないと認識しています。
その中で、今のGAテクノロジーズグループは、「経営×データ」を進める上で必要なパーツがすべてそろいそうだという手応えを得ています。
今回のマーキュリーのグループ入りのように、M&Aも含めたデータ取得戦略は非常に明確ですし、社内の研究開発組織「Advanced Innovation Strategy Center」(以下、AISC)のように、実際に取得したデータを実業に活かすための、高い専門性を持ったチームもあります。
不動産業界において、独自のデータを保有しているというだけではなく、そうした貴重なデータを活用するための戦略作りが非常に高い解像度でできていて、それを一歩一歩着実に実行している。実はここが一番大きなGAテクノロジーズグループの強みであり、数年後に一番効いてくる要素なのではないかと考えています。
ー マーキュリーのグループ入りに伴う取り組み以外についても教えてください。奧村さんは、3月の執行役員就任インタビューで「グループ全体のデータ基盤の整理に取り組みたい」とおっしゃっていましたが、進捗はいかがですか?
奧村:
データ基盤の整理による意思決定支援に関しては、ここ数ヶ月で大きく前進しました。KPIマネジメント専任のメンバーと一緒に、取得するべきデータの整理や、定義の統一などを行ったことにより、社内のさまざまな部署で、データを統一的に見ることができるようになってきています。
ちょうど今月から、データ基盤の刷新プロジェクトもスタートしています。具体的には、今後種類も量も増えていくデータへの対応、その分析の標準化や効率化、AIや外部連携といったデータエコシステムの拡充、データ品質のモニタリング、プライバシーを含めたデータガバナンスといった内容です。
また社内におけるAIの利用に関しても、安定的・継続的に運用・管理するためのチームをつくり、始動するところです。
そのほか、上記のような施策を実行するためのチーム編成、そのための採用なども含めて、まさに上流から下流まですべて同時に行っているというのが実際のところです。
ー 一言で「データ✖️経営」といっても、その内容は実に多岐にわたりますね。CDOとしてジョインしてから4ヶ月が過ぎましたが、どのような4ヶ月でしたか?
奧村:
日本ではCDOという役職はまだそれほど一般的ではありません。データ分析、AI技術、データ基盤など様々な領域にわたって、解像度とスピード感を持って取り組んでいるデータ人材は、まだ少ないのではないかと思います。そういった意味で、誰もやったことがない、 知見がないような領域に挑戦していると感じていますし、GAテクノロジーズにはそれをやりに来たと思っていますので、とにかく過去一仕事が楽しく、毎日がものすごいスピードで過ぎていっています。
ー 奧村さんの参画によって、GAテクノロジーズのデータ戦略も大きく動き出した印象です
樋口:
2013年の創業時から、エンジニア、PdM、AI人材と、その時々の社の課題に応じた人材の採用や育成に注力してきました。
昨年あたりからは、社内で「部門によって、見ている数字が違っている」「分析する人間によって、結果が違ってくる」といったデータに関する課題が出始めました 。
当社にはAISCという研究開発組織もあり、これまでにもデータを必要とする取り組みは行ってきたので、データの必要性というのは当然理解していたつもりです。
ただ、もっと事業全体を俯瞰した上で、点と点をつなぎ、必要な整備をしていく人材、我々が持っている唯一無二のデータをきちんと活用できる人間が必要だという課題が強くなってきていることを感じ、データのプロフェッショナルの採用に動き出して、奧村さんにジョインしていただけることになりました。
ー データのスペシャリストである奧村さんの参画、マーキュリーのグループ入りと、GAテクノロジーズグループの、データ戦略に対する意気込みが伝わってきます
樋口:
今回のマーキュリーのグループ入りで、GAテクノロジーズグループは、不動産業界におけるデータホルダーとしてのポジションを確立することができつつあります。今後は、引き続き奧村さんにグループ全体のデータ活用、データ戦略を引っ張ってもらいながら、不動産市場全体の透明性の向上や非対称性の解消、不動産業務の効率化を実現していきたいと考えています。
(※1)株式会社GA technologies 「適時開示:事業計画及び成長可能性に関する事項」 P27(2024年06月13日発表)https://ssl4.eir-parts.net/doc/3491/tdnet/2460047/00.pdf
(※2)イタンジ株式会社「イタンジ「申込受付くん」、入居申込件数 年間100万件突破!」(2024年4月15日)https://www.itandi.co.jp/news_posts/1223
(※3)全国賃貸住宅新聞発⾏「賃貸仲介・⼊居者動向データブック2024」の2023年賃貸仲介件数(推計)178万件より、ITANDIの申込から契約までのキャンセル率33%を基に⼊居申込数を265万件と算出し、ITANDIの年間電⼦⼊居申込数107万件から割合を推計
(※4)国土交通省「不動産IDルール検討会」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk5_000001_00006.html
撮影:今井淳史
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