株式会社マーキュリーリアルテックイノベーターの”掛け算”により、両社の保有する独自のデータを掛け合わせ、不動産業界に変革を起こす新しいインフラを(株式会社マーキュリーリアルテックイノベーター代表取締役 CEO 陣隆浩 × 当社代表 樋口 龍)
2024年7月16日、GA technologies(GAテクノロジーズ)は、株式会社マーキュリーリアルテックイノベーターのグループ入りを発表しました。
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株式会社マーキュリーリアルテックイノベーター代表取締役 CEOの陣隆浩と、GAテクノロジーズの代表取締役 CEOの樋口龍が、グループへの参画を決めるに至った背景、それに伴う今後の事業戦略について語り合いました。
Profile
30年以上にわたり蓄積してきた分譲マンションのデータを活用し、独自性の高い不動産マーケティングシステムを提供
ー 陣さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
陣隆浩(以下、陣):
20代前半の時からずっと不動産業界にいます。投資用マンションの開発販売から始まり、売買の仲介や賃貸管理、分譲マンションの販売など不動産業全般に関わってきました。
私が不動産業界に従事し始めてから数年が経った頃、「マルチメディア」という言葉が出始めた頃でした。私なりにいろいろ勉強するうちに、「これは将来的に大きな可能性を秘めているのではないか」と思うようになりました。
そんな時、たまたま別の不動産会社に勤めている知人から「戸建て物件に関する新しいサービスを開始するので、戸建てのデータを集めてもらえないか」と依頼されました。それで、1人でマイソク(※1)を調べ、物件の販売状況を確認して、月に1度データとしてその企業に納品するようになりました。
29歳のときに、その会社に正式に正社員としてジョインすることになりました。しかし2年後、過剰な投資が原因でその会社が倒産してしまいました。それを機に、そこにいたメンバー10人と同じような事業内容で、「株式会社エクス」という会社を始めました。ちょうど2000年のことです。
最終的には、前社が持っていたデータベースの著作権をすべて取得することができました。一方、同時期に、前職の仲間が、「株式会社オフィスキャスター」という会社で類似した事業を立ち上げました。その中心メンバーが、現在当社の取締役を務める大寺利幸です。そして2003年に両社が合併し、「株式会社マーキュリー」に商号変更いたしました。
ー 1990年からの物件データが蓄積できているのは、そのような経緯があったからなのですね。次に現在の事業内容と、御社の強みについて教えてください。
陣:
主に、SaaS型の不動産業界向けマーケティングシステムを展開しています。具体的には、30年以上前から分譲マンションのデータベースを構築し、新築分譲時にしか取得できない物件コンセプトブック、図面集、価格表を蓄積してきました。時期としましては、1990年からの、首都圏、東海圏、関西圏における分譲マンションの新築販売時のデータになります。
データソースはパンフレットですが、現在、数としては4万超のパンフレットを所有し、それを全てデジタル化しています。マンション棟数としては約6万棟、住戸データとしましては約280万戸、間取り図としては約67万種類、物件写真としましては2万以上を所有しています。そうしたデータを、マンションデベロッパーや仲介事業者に提供し、分譲マンションを開発・販売する際のマーケティングに活用していただいております。過去に遡ってこうした物件データを取得することは困難なので、参入障壁が非常に高いデータベースとなっています。
ー 数でお聞きすると、とてつもない量のデータですね
陣:
当時は、データを取得すること自体がとても大変でした。現在は、新築分譲マンションのデベロッパーさんですと、約300社に契約をしていただいてまして、2023年の供給戸数ランキング(※2)上位50社のうち50社全てに顧客になっていただいております。さらに、その契約におきましては、「すべての物件パンフレットの二次利用が可能」としていただいております。
「他にはないデータを持つ企業」と感じて、7年前からアプローチ
ー 今回のグループ入りを決めるに至った経緯について、教えてください。
樋口龍(以下、樋口):
我々の会社は2013年の創業時から「不動産テック」を目指し、様々な不動産テック企業を調べてきましたが、その過程でマーキュリーリアルテックイノベーター(以下「マーキュリー」)の存在を知りました。
当時から我々は「データは1日にしてならず」というのを痛感していましたので、「マーキュリーは、他にはないデータを持っている、ただ一つの企業だ」と感じていました。
ですから、最初から陣さんに「一緒にやらせていただけませんか」というお話をさせていただきました。それが今から7年前、2017年のことです。
ただ当時ですと、我々も創業して数年で今ほど体制も整っておらず、逆にマーキュリーに対して「何か提供できる価値はあるのか」と問われたら、そのような状況ではなかったと思います。
ですから、その時陣さんからは、「いつか一緒にできたらいいですね」とやんわり言われて終わりました。
とはいえ、何度も申し上げるように、マーキュリーが「オンリーワンの企業」と感じたのは間違いなかったので、それ以降も定期的に陣さんとお食事に行かせていただいたり、メールを送らせていただいたり、事業の管掌をされているメンバーの方とコミュニケーションを取らせていただいたりしてきました。
今回グループ入りという形に至る前にも「出資という形でしたら」ということで、当社から出資をさせていただいたこともありましたが、その時にも「ぜひご一緒させていただけませんか」ということはお伝えしていました。
けれど当時はマーキュリーさんが上場間近だったこともあり、その時も話はまとまりませんでした。そして2022年に上場されてから以降も、ずっとアプローチを続けてきました。
ー 改めて聞くとすごい話ですね。それだけ樋口さんの強い思いを感じます。
樋口:
陣さんに、いつか「しつこい」と怒られるんじゃないかと思いながらも、アプローチはやめませんでした。 マーキュリーがこれまで集めてこられたデータ、行っているビジネスには、それほどの価値があるからです。テクノロジーだけで変えられる世界もありますが、マーキュリーの持っているデータ、実績でしか変えられない世界があります。ですから数回断られたくらいではめげずに、何度もお声がけをさせていただいてきました。
GAテクノロジーズがRENOSYやITANDIのサービスを通して培ってきたデータに、マーキュリーのデータを掛け合わせれば、日本の不動産業界にとって大きなプラスになると確信しています。「 当社にとって」というよりも、「顧客にとって、そして日本の不動産業界全体」が良くなるために、マーキュリーのグループ入りが絶対に必要だったのです。
GAテクノロジーズグループという船に乗り、大きな夢を共に目指したい
ー 逆に、陣さんがこのタイミングでGAテクノロジーズグループへの参画を決断したのはなぜでしょう?
陣:
GAテクノロジーズグループという船に乗り、樋口さんが描いている大きな夢を共に目指したいと思ったからです。
この7年、ずっと樋口さんからのラブコールを受け続けてきました。一応、僕が年上なので率直な言葉を使わせてもらうと、彼は本当にいいやつなんです。すごく素直で正直だし、情熱的。
またこれまでずっと、ご自身の夢を僕に語り続けてきてくれてきましたが、毎年毎年、その夢や目標を着々と実現していく姿を目の当たりにし、その実行力、人間性に対して惚れてしまったというところです。「何事も諦めてはだめ」「やり続けることの大切さ」を思い知らされました。まさに上杉鷹山の「成せば成る、成さねば成らぬ何事も、成らぬは人の成さぬなりけり」という言葉そのものです。
そもそも、樋口さんが思い描いている世界と、僕たちが思い描いている世界は一緒だということもずっと感じてきました。
GAテクノロジーズのビジョンは「テクノロジー × イノベーションで、人々に感動を生む世界のトップ企業を創る。」というもの。マーキュリーのビジョンは「BigData × Technologyで不動産の未来は私たちが動かす」というものです。 不動産業界は、DXがどの業界よりも遅れているレガシーな世界だと感じています。そこに変革を起こすという思いはまったく同じです。
両社の保有するデータを掛け合わせ、新たなプラットフォームの構築へ
ー 両社の保有するデータを使って、今後どのようなことに取り組んでいかれるのでしょうか
樋口:
何度もお伝えさせていただいたように、マーキュリーは非常に独自性の高い不動産データを持っています。
またGAテクノロジーズが展開するネット不動産投資サービスブランド「RENOSY」では、不動産投資におけるマーケットシェアの約10%を見込むまでになり、他にはない成約データを取得してきました。(※3)同じくグループ会社の「ITANDI」でも、日本の賃貸申込約240万件のうち107万件の申込を獲得し(※4)、市場の約40%の成約データを取得するに至っています。(※5)
両社が保有するこれらの貴重なデータを一つのプラットフォームにすべて集約し、不動産事業者や一般顧客の方々が一気通貫のサービスとしてそのインフラを使用できるようになれば、不動産の流通をより活性化することができると考えています。
陣:
我々としましては、当社の保有するデータに、RENOSYとITANDIが持っているデータや顧客基盤、テクノロジーを掛け合わせ、現在のto Bだけでなくto Cの新たなサービスを展開したいと考えています。
また今後は、両社の保有するデータを使って、金融業界における新たなサービスを開発・展開したいとも考えています。とにかく今後の事業展開につきましては、考えればきりがないくらい無限の可能性しかないと思っています。
樋口:
陣さんが今おっしゃった金融業界というところにつきましては、具体的には、両社の保有するデータを使い、適正でスピーディーな不動産査定を実現できるプラットフォームを構築したいと考えています。それにより、査定業務の効率化だけでなく、透明性を高めることによって不動産業界の大きな課題の一つである「情報の非対称性」をなくし、金融機関だけでなく、売り手・買い手すべてにとってもより簡単に、安心して不動産取引ができる世界をつくることができると考えています。
(※1)物件情報(概要、間取り図、地図など)をまとめた資料の通称
(※2)株式会社 不動産経済研究所「2023年 全国分譲マンション 売主グループ別供給戸数ランキング」(2024年3月26日)https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/582/mdn20240326.pdf
(※3)株式会社GA technologies 「適時開示:事業計画及び成長可能性に関する事項」 P27(2024年06月13日発表)https://ssl4.eir-parts.net/doc/3491/tdnet/2460047/00.pdf
(※4)イタンジ株式会社「イタンジ「申込受付くん」、入居申込件数 年間100万件突破!」(2024年4月15日)https://www.itandi.co.jp/news_posts/1223(※5)全国賃貸住宅新聞発⾏「賃貸仲介・⼊居者動向データブック2024」の2023年賃貸仲介件数(推計)178万件より、ITANDIの申込から契約までのキャンセル率33%を基に⼊居申込数を265万件と算出し、ITANDIの年間電⼦⼊居申込数107万件から割合を推計
撮影:今井淳史
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