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飛躍の鍵は「顧客体験の向上」と「グローバル化」にあり プロダクトから考えるこれからのRENOSY(RENOSY事業責任者 樋口大 × プロダクト最高責任者 熊谷亘太郎)

長年、大手旅行予約サイトのプロダクトを統括するなど、PdMとして豊富な経験と知見を持つ熊谷亘太郎が、2024年5月にGAtechnologies(GAテクノロジーズ)にジョインした。Product Growth部長として、RENOSYにおけるプロダクトの最高責任者となった熊谷と、RENOSYの事業責任者を務めるGAテクノロジーズ取締役 専務執行役員の樋口大が、RENOSYのプロダクトに関する今後のビジョン、具体的な取り組みについて語り合った。

profile

熊谷亘太郎
独立系ソフトウェア会社にて、研究開発、プロダクトマネージャ、事業戦略、営業、プロダクトマーケティングの経験を経て、2012年4月大手インターネット事業会社に入社。中国開発拠点への出向後、旅行予約サイトに配属となり、PdMとして、Partnerおよび社内ユーザ向けのシステムを担当。インバウンドサイトを担当し、2022年7月にリリース。2024年5月にGAテクノロジーズに参画。

樋口大
2012年、新卒で大手不動産デベロッパーに入社。2013年創業よりGAテクノロジーズに参画。2014年、取締役に就任。2020年より、RENOSY事業責任者。

大手旅行予約サイトのPdMとして、グローバルプラットフォームのフルスクラッチ開発、グロースハックに取り組む


ー熊谷さんのこれまでのキャリアについて教えてください

熊谷亘太郎(以下、熊谷):
大学卒業後、新卒で携帯向けのブラウザを作っているソフトウェアの会社に入社し、エンジニアとしてキャリアをスタートさせました。その後社内にいたマイクロソフト出身のメンバーが「プロダクトマネジメントチーム」を立ち上げるということになり、自ら志望し第1期生としてそのチームに入れていただいたところから、私のPdMとしてのキャリアが始まりました。

その後、PdMの組織が範囲を拡大して、事業戦略や事業統括も担うようになり、組織の名前は変わりましたが、基本的にはプロダクトマネジメントを中心にやってきました。 

その一方、私は入社の時からずっと「海外で仕事がしたい」という希望を持っていましたので、志願して北京の子会社に赴任することになりました。 

その後日本の大手インターネットサービス事業会社に転職し、北京にある子会社に出向しました。そこで4年ほど開発マネージャーとして勤務した後日本に帰国し、以降10年以上、事業の一つである大手旅行予約サイトのPdMをしていました。

ー 大手旅行予約サイトでは、どのようなプロダクトに関わったのですか?
 
熊谷:
一番最初に取り組んだのは、会計システムのPdMです。当時、会計周りのオペレーションだけで月に100件ほどあり、そこに関わっているメンバーはPdMもエンジニアも日々オペレーションに追われている状態でした。 

そのような状態は絶対におかしいと思いましたので、そのオペレーションを全てリストアップして「要る/要らない」に分け、ビジネスモデルを変えられるものは変え、自動化できるものは自動化して、1年かけてそのオペレーションをゼロにしました。
それによりメンバーは開発だけに集中できるようになり、次々と新しい処理ができるようになりました。

次に取り組んだのは管理画面です。社内ユーザーと旅行事業者側が使うシステムを担当しました。

最も大きい仕事は、グローバルプラットフォームをつくり、最初のローンチとしてインバウンドサービスをリリースしたことです。

訪日外国人向け宿泊予約サイトとして、2022年の7月にリリースしました。リリース後にはグロースハックも担当し、1年かけてデイリーの売り上げを200万から2億と約100倍に伸ばしました。 

当時はコロナ明けというタイミングも味方し、システムの改善をすればするほど、それに比例してコンバージョンが上がっていく状況で、日々大きな達成感とやりがいを感じていました。

「RENOSYのプロダクトを世界に出す」というビジョンに共感、   新たなチャレンジへ     


ー そこからなぜGAテクノロジーズ(以下、GA)に入社されることになったのですか?

熊谷:
グローバルプラットフォームの案件は、ゼロからイチをつくるフルスクラッチ開発でした。そこをやり切り、売上も1から10に伸ばすことができました。
そこから「10を100に伸ばす」ことは自分ではなくてもできる仕事だと思ったとき、次第に「また新しいことにチャレンジしたい」と感じるようになりました。

ちょうどそのタイミングで、GAの方からお声がけをいただきました。すぐに大さんや代表取締役 CEOの樋口龍さん、そのほかのメンバーの方々とお会いすることになり、その後すぐに転職を決めました。

ー 決め手はなんでしたか?

熊谷:
2つあります。
1つは、お会いした人たちが、人柄が滲み出ているいい人ばかりだったことです。

2つ目は、大さんたちとお会いしたときに、今後のビジョンとして「RENOSYのプロダクトをグローバルに出していく」という話があったことです。
私はこれまでずっと「日本発のプロダクトをグローバルに出す」というコンセプトに身を置いてきましたし、それは自分にとってもチャレンジし続けたいと思っている大きなテーマでした。
DXが進んでいない不動産業界でそのテーマに取り組むということは、自分の人生をかけるに値する非常に大きなチャレンジだと感じています。

ー 樋口大さんは、熊谷さんにどのような役割を期待されていますか?

樋口大:
熊谷さんに期待する役割は、3つあります。

一つは、プロダクトのグローバル化です。
当社は「世界のトップ企業を創る」というビジョンを掲げ、海外法人の設立やM&Aなども積極的に行ってきましたが、プロダクトやテックという観点から見た場合、グローバル化は「まさにこれから」というのが実際のところだと言えます。
PdMとして豊富なグローバル経験と実績をお持ちの熊谷さんに、ぜひそこを牽引してもらいたいと考えました。 
その点に関しては、正直期待以上の働きぶりです。私や樋口龍に対して、高い解像度で様々な提言をしてくれるので、こちらの視座も自然と上がってきているのを感じます。

 2つ目は、RENOSYのビジョンを達成するための、長期的なプロダクト戦略の立案と、ロードマップの作成です。
RENOSYは、不動産業界における「リアル×テクノロジー」を掲げて様々なサービスを展開してきており、業界内においては、テック分野を牽引している存在だと自負しています。
ただこれまで当社のプロダクトチームは、目先の売り上げや業績を上げることを一番の目的として、プロダクトの改善を行ってきました。
これまでのフェーズにおいては、そのやり方に間違いはなかったと思います。

しかしRENOSYとして「不動産での資産形成を当たり前にする」というビジョンを達成するために、新たなフェーズに入ったと考えています。
ですから、これまでの弊社のプロダクトの開発・改善の仕方をアップデートし、新たな視座と視点で、プロダクトの戦略立案やロードマップの作成を行うことが必要でした。
そういったところで、熊谷さんの今までの経験や知見は、我々の足りない部分を補ってくれるものと考えています。

3つ目は、プロダクトチームと開発組織の連携です。
もちろんこれまでも弊社では、プロダクトチームと開発組織が「共に取り組む」ということを大切にしてきました。しかし今後テックをさらにスケールさせていくために、その連携をより強化する必要があると考えています。 

熊谷さんはファーストキャリアがエンジニアということもあり、開発の知見もお持ちなので、開発組織のさらなる強化、アップデートといったところでも、組織をリードしていただけると思っています。

ー 熊谷さんは実際に入社してから、GAやRENOSYにどのような印象を持ちましたか?

熊谷:
入社前から、「みなさんの人間性がいい」というのは感じていましたが、それは本当に印象通りでした。 いまだに1人も嫌な人に会っていないし、社内政治をする人もいない。本当に気持ちの良い環境です。

もう一つは、入社前に予想していたより、私が貢献できそうなところがたくさんありそうだということです。大きな宝から小さな宝までが目の前に広がっている状態で、どこから取り掛かろうかとわくわくしています。 

日本から、世界の不動産投資を変えていく

ー RENOSYの今後について、まずは全体の成長戦略や今後のビジョンについて教えていただけますか。 

樋口大:
まず、RENOSYのビジョンは「不動産での資産形成を当たり前にする」というものです。そして、我々がそのビジョンを達成する場所は、「日本」だけではなく、「世界」です。 
私は、中国や欧米含め、「不動産での資産形成」が当たり前になっている国は、一つもないと考えています。 RENOSYがチャレンジしているのはまさにそこなので、日本から世界の不動産投資を変えていくということを達成したいと思っています。

そのビジョンを達成するために、重要だと考えていることが3つあります。

1つ目はデータの活用です。
 GAの強みとしては、不動産取引における貴重な成約データを多く持っているということがあげられます。この活用によって、RENOSYの事業、ビジネスを、さらにスケールできると考えています。

 2つ目は、テクノロジーの活用です。社内の業務改善だけでなく、顧客に対しても今以上に積極的にテクノロジーを導入したいと考えています。

一番重要だと思っているのが、3つ目となる顧客体験の向上です。
「 不動産投資」というものは、まだ「リスクが高そう」「難しそう」といったマイナスイメージがあると感じています。
それに対しては、RENOSYがその利便性、安心性といったところを、しっかりと発信していくことが必要ですし、そのためにはサービス自体をアップデートさせていかなければなりません。

以上の3つに注力することが、「不動産での資産形成を当たり前にする」というRENOSYのビジョンを達成するために必要だと思っています。

ー その中で、PdMである熊谷さんは、具体的にどのようなことに取り組んでいくのでしょう。

熊谷:
GAにジョインして、まず手をつけたのが「プロダクトビジョン」の作成です。
PdMの一番大事な役割が「プロダクトビジョン」を作ることだからです。

GAには、3ヶ月、6ヶ月といったショートタームでのロードマップはありましたが、 ロングタームで「プロダクトがどう進化していくのか」については、皆で共有できるような形に落とし込んでいるものはありませんでした。そこでメンバーのみなさんにヒアリングを行い、長期での「プロダクトビジョン」を作成しました。

その中で大きな柱となったのが「顧客体験の向上」と「マーケットの拡大」です。
この両方が達成できれば、グローバルに通用するプロダクトが作れると考えています。 

ー 「顧客体験の向上」と「マーケットの拡大」、それぞれについて、具体的な内容を教えてください

熊谷:
「顧客体験の向上」に関しては、クロスデバイス対応はもちろんのこと、購入決定前フェーズのDXにも取り組みたいと考えています。具体的には、顧客が自分自身で投資用物件を検索・比較し、自分に合った最適な物件を選んで、納得した形で購入するというところまでを、 全てウェブで完結する方向を目指していきます。

現状では、RENOSYに興味を持たれたお客様が、 まず当社に問い合わせをし、それを受けてセールスの担当者がビジネスモデルなどの説明して、 不動産投資に関するお客様のニーズや目的を掘り下げるということをしていますが、 そういったビジネスモデルの理解や、自身のニーズへの理解も、ウェブ上でお客様自身が取り組めるという形を目指したいと考えていきます。

「マーケットの拡大」については、主にユーザーマーケットの拡大と、物件マーケットの拡大を考えています。
GAはグループ会社に、北米圏のRenters Warehouseや、 中華圏の顧客にアプローチできる神居秒算、RENOSY (Thailand) Co., Ltd.などありますが、現状はそれぞれがそれぞれのサービスを運営している状況です。 これらを1つにまとめて、 言語を変えるだけでほかのマーケットに簡単にアプローチできるという形を目指したいと思っています。

物件のバリエーションについても、今は中古のコンパクトマンションがメインの商材となっていますが、 それに加えてファミリー向け物件や、アパート1棟、オフィス用の賃貸、また、他社の取り扱い物件もラインナップに加えるなど、その選択肢を最大限に増やし、最終的にはそれぞれの国の法律に則ったプロセスで、どの国の物件、どんなタイプの物件も購入できる形を目指します。

もちろん「顧客体験の向上」「マーケットの拡大」と並行して、オペレーションコストをできるだけ削減化するために、業務プロセス自体の改善や自動化も行うつもりです。

ー それらを実行するための具体的なロードマップは見えているのでしょうか。 

熊谷:
RENOSYマーケットプレイスは、FY2028年に向け、非常に高い目標数字を設定しています。
それを達成するためには、FY2027年中に、グローバルプラットフォームを作り終わっておく必要があります。 ですからそこから逆算して、開発チームの編成や、プロダクトのリクワイアメントに関するマイルストーンを設定しているところです。

ー GAに参画前から、熊谷さんはPdMをテーマにしたカンファレンスに登壇し、ご自分の知見を広くシェアされていました。GAでも、社内のPdM向けに、勉強会を開いているそうですね

熊谷:
前社では、新しくPdMとして入社してきたメンバー向けに、オンボーディングと初期トレーニングを兼ねたレクチャーを行っていました。
GAでも、私がこれまで培ってきたノウハウを集約したレクチャー用の資料を使って、PdMの役割やビジョンの作成方法などについてのレクチャーを実施しました。好評でしたので、同じ内容のものをグループ各社のPdM向けにも実施する予定になっています。 

ー 長年PdMとして活躍されて来られた熊谷さんは、PdMという役割において、大事なことは何だと思いますか?

熊谷:
PdMは、「どれだけ自分に情報を集められるか」というところが一番大きな価値だと思っています。そうやって集めた情報に優先度をつけ、経営ビジョンと照らし合わせて「今これをやるべきだ」と決断するのがPdMです。ですから情報がいつでも集まってくるようにすることが非常に重要ですし、それは1人ではなく、チーム全体として取り組まなければなりません。ですからPdM全員の底上げが必要になってきます。

樋口大:
熊谷さんのすごいところは、社内の様々な部署、メンバーから「現場の声」というものを非常に丁寧に掬い上げながら、長期のビジョンやロードマップ、戦略を考えているところです。 

僕としては、熊谷さんが「全体最適」という視点から、RENOSYやプロダクトのあり方ををしっかり考えてくれているのが非常に心強いですし、メンバーたちも、熊谷さんとは安心感を持って働くことができていると思っています。

熊谷:
ヒアリングに関して言えば、現在、GAのグループ会社各社のPdMからヒアリングを続けているところです。そこから様々なサービスを繋げるユニークなアイデアもたくさん出てきています。今後は、M&A後の企業やそのサービスとのシナジーをより強めていけるようなプロダクトも考えていきたいと思っています。


撮影:今井淳史

※本記事は作成時点での情報を参考にしております。最新の情報と異なる場合がございますので、ご了承ください。