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現場に役立つソリューションをスピーディーに届ける|GAテクノロジーズ新執行役員・稲本浩久 就任インタビュー

2023年11月1日、株式会社GA technologies(GAテクノロジーズ)の執行役員 CAIO(最高AI責任者)に、稲本浩久が就任しました。

プレスリリース「新経営執行体制に関するお知らせ」

この記事では、稲本の経歴や就任の背景、今後の目標や意気込みについて、インタビュー形式でお届けします。

Profile

稲本 浩久 / Hirohisa Inamoto
2002年、新卒でリコーに入社し、10年以上画像処理・認識技術の研究開発に従事。その後、新規事業企画者に転身。2017年、GAテクノロジーズに入社。不動産広告の自動読み取りシステムや間取り図の自動書き起こしシステムを開発。仕入れ業務システムへのAI・RPAの導入等も担当。2019年より、AI Strategy Centerの室長を務める。

スピード感を求めて、大手からベンチャーへ

― 新卒入社から10年以上大企業に勤められたあと、GAテクノロジーズへの転職を決めたきっかけを教えてください。

私はもともとリコーの研究所にいたのですが、研究所の中で自分が作ったものがなかなか世に出ていかないことに対して、次第に不満を感じるようになりました。それでまずは、自分の作ったものを社内の各所に売り込みに行き始めたんです。いろんな部署にヒアリングして、同期や知り合いのつてを辿って、「何か自分たちが役立てるところはないのか」を探り、自動化を進めたり、最適化を進めたりしていました。それがキャリアの初期ですね。

その後、やっぱり社内だけではなく社外にインパクトのあることがしたくて、新規事業企画の部署に移ってウェブサービスの立ち上げをやりました。そのウェブサービスは今も続いていますし、一定レベルのものを作れたと思っています。ただ、 やりたいことに対して議論や承認のプロセスが複雑で、思い通りのものをつくるのにすごく時間がかかってしまうんです。

新たなビジネスを考える上で、「こういうことをやらないと、お客さんにアピールできないな」と思うことは多々ありますが、スピード感が間に合わず、なかなか動けない。そんな日々を過ごす中で、「ベンチャーでトライしてみたらどうなんだろう」と思ったのが、転職のきっかけですね。

― 転職先は、最初から不動産業界に絞っておられたのですか?

リコーでの経験から、不動産業界には特に魅力を感じていました。当時私は「RICOH THETA」という360°撮影できる特殊なカメラを使った「THETA 360.biz」というクラウドサービスをやっていました。これをビジネスに応用しようとしたとき、最初に飛びついてくださったのが、不動産業界だったんです。お部屋のすみずみまで一発で撮影して、お客様にお伝えできるということで。

そういう経緯があって、大きい会社から小さい会社まで、不動産業界のいろいろな会社を回りました。ちょっと変わったところで言うと、販売アライアンスを組んでもらうために、不動産ソリューションを提供する会社さんにも行って「貴社で売ってくれませんか」と相談することもありました。

アナログな業界だからこそ、やれることがいっぱいある

― 大手機器メーカーであるリコーさんから見て、不動産業界の雰囲気はいかがでしたか。

当時、大手顧客のパーティーに行くと有名なアーティストグループが来ていたりして、その華々しさに魅力を感じることもありました。前職は業務効率化を推し進める、いわば成熟期を迎えていたので、あまり成長期ならではの華やかさはなくなっていたんですよね。バブル時代を経験した先輩たちに「昔はこうだったんだよ」と聞いて、「いいなあ、そんな世界、自分たちも体験したかったな」と思ったものです。

でも、何より不動産業界が面白いだろうと感じた一番のポイントは、「これだけアナログな部分がいっぱいあるのなら、自分がやれることがいっぱいあるな」というところです。

リコーで最初に担当していたのが、コピー機の画質を向上させる仕事だったんです。当時はまだコピー機の画質が競合優位性になった時代だったのですが、私が入社した頃にはそれもだいぶ落ち着いてきて、「ちょっとやそっと画質が良くなったからといって売れるわけではない」「でも競合他社と比べられてしまうから、取り組まないわけにはいかない」と、分野として成熟期にありました。したがって、次にやるべきテーマを探すのも、結構難しかったんです。そういう意味で、アナログで課題だらけの不動産業界は本当に楽しそうだと思いました。

― デジタル化でいうと不動産業界は「未開の土地」的な面があると思うのですが、怖気づくようなことはなく、逆に面白い、楽しそうだと感じられたんですね。

これは本当に人それぞれで、しっかり勉強してから取り組みたい人もいれば、とりあえずやってみるのが好きな人もいます。私が室長を務めるAI Strategy Centerにはどちらかというと「見よう見まねでもいいから、とりあえず何かやってみよう」みたいなメンタリティーの方が多いですね。

全てにおいてプロを目指し出すと、できないことがいっぱい出てくる。さらに「専門の人」を連れてこようと思うと、どんどんコストも高くなっていきますよね。その人をずっと有効に使い続けるのも、マネジメントとしてすごく難しくなりますし。

― 「とりあえず何かやってみよう」というチャレンジ精神で飛び込まれたのですね。

研究開発そのものに、「とりあえず何かやってみよう」という側面がありますからね。誰かが作ってくれたマニュアルをなぞるというより、自分でそのマニュアルを作っていくことに楽しさを感じるんだと思います。

現場の役に立つプロダクトづくり、その難しさと喜び

― 不動産業界初の自社AI部門、AI Strategy Center(以下、AISC)は現在、非常に幅広いプロダクトに携わる部門になっていますが、2017年の入社時、最初に取り組まれたのはどのようなプロジェクトだったのですか?

入ってすぐに取り組んだのはマイソク(物件の概要・間取り・地図などをまとめた資料の通称)の読み取りですね。「物件情報が画像で流通している」というのがもう致命的だったので、そこは1丁目1番地、まず最初に取り組まなきゃいけないことだと思っていました。

それで、入社後1週間でプロトタイプを作って、代表の樋口さんに持っていったら、ぜひ載せてくださいと言われて。エンジニアとタッグを組んで、1ヶ月ほどで当時のテックサプライヤー(現:SUPPLIER by RENOSY)にその機能が載りました。

すると「いっそのこと「SUPPLIER by RENOSY」のプロジェクトマネージャーもやってはどうか」と言われて、PMになったんです。

― なんと言いますか、すごく自由ですね。

本当に自由でした。当時5人のチームメンバーで、約半年間、思いつく限りの自動化を進めました。その結果、1物件仕入れるのに25時間かかっていたのが、7時間程度で済むようになりました。

机上の計算だけでなく、実際に現場の方の体感を聞いてみようと思ってヒアリングにも行きました。「導入前と導入後でどれぐらい変わりましたか?」と聞いたら、「もう、なかった頃が想像できないので、どれくらい変わったかも想像できません」と言っていただけたんです。すごく嬉しかったですね。 

― その後はどのようなプロダクトに参画されましたか?

「INSIGHT by RENOSY」を担当しました。当時RENOSYのセールスが紙を使って商談していると聞き、我々としてそこをなんとかしたいと作ってみたものです。

もともと接客ツールは電子化が避けられないと思っていました。収支シミュレーションを行う中で、状況が変わるたびにお客様から電話が来て、シミュレーションを新しく作ってまたお送りする、みたいなことをやっているメンバーもいましたから。

でも、本当に苦労したのは現場への浸透でした。最初にプロトタイプを作ってから、現場で実際使ってもらえるまでに1年ぐらいかかりましたね。

― 先程のSUPPLIER by RENOSYとは違うハードルがあったのですね。

そうですね。「SUPPLIER by RENOSY」は、それがないと仕事が回らないという感じですが、「INSIGHT by RENOSY」の場合、それがなくても商談自体はできてしまうんですよね。また当時、フィールドセールスは自分で資料を作らず、インサイドセールスに作成を任せるというシステムになっていたので、フィールドセールスから見るとわざわざ新しいシステムを導入するまでもない、となりがちです。

そこで取り組んだのは、使ってくれる人をまず探すことでした。たいていの人は、「いいですね」「ちょっとここ直した方がいいですね」などのコメントはくれるものの、実際に見たら使っていないんです。現場の業務が忙しいので、それは当たり前なのですが。

その中から、新しいものに食いついてくれそうな人、ファンになってくれる人を見つけるまでに数ヶ月をかけました。すると1人のセールスが使い方も含めて、エバンジェリストとして活動してくださって、それがとても大きかったですね。

そういうことをやっているうちに、「実需向けにも同様のツールを作ってほしい」という声が上がって「LIFE DESIGNER by RENOSY」を作り、「じゃあ賃貸向けも欲しい」ということで「LIFE DESIGNER for RENT」を作り、CADを書き起こす技術でリノベ向けの「BLUEPRINT by RENOSY」を作り……というふうに、相乗効果でいろいろな部署から依頼をいただき、お手伝いをするようになりました。

定量化を進めつつ、初心を忘れない研究開発を

― 近年、AISCが注力している活動についてお聞かせください。

定量化の取り組みに力を入れています。現在、R&Dチーム、データサイエンスチーム、DXチームという3つのチームがあるのですが、このチーム分けは「成果の測りやすさ」で決めています。

R&Dチームは、まだどこに使えるかわからないため費用対効果が読みづらいものの、「こういった技術が必要なんじゃないか」という投資をやっていく。データサイエンスチームは、ビジネスインパクトをデータにもとづいて、ある程度客観的に提示する。そしてDXチームは、「どれぐらい費用や時間を削減できたのか」という形でしっかり定量的に評価し、基準を満たさないものには取り組まないようにします。

― 具体的な取り組みを少し教えてください。

例えばR&Dチームでは、さまざまな地域のデータを扱っています。道路や歩道がどこにあるのか。電車のネットワークがどういうふうに通っていて、A地点とB地点を行き来するのにどういう手段があって……というようなデータですね。 不動産はほとんど立地で決まると言われている中、このようなデータは非常に重要な情報だと思っているので、そういったところにはしっかり投資をしてデータを集めたり整備しています。

活用先として挙げられるのは、例えば物件のスコアリングですね。今まさに、物件の売れ残りやすさのスコアリングに取り組んでいて、在庫管理のチームに試験運用してもらっているところです。将来的にはバイヤーが仕入れるタイミングで、どれぐらい売れにくいのかを認識した上で価格を決めるというフローを実現していきたいと考えています。今は適正家賃と利回りで、収益還元法で価格が決まるのですが、そこにもう1つ軸を追加するイメージですね。

― 2019年にAI Strategy Centerの室長になられて以来、コロナ禍という大きな出来事もありましたが、2023年の今振り返って、社内の変化を感じることはありますか?

実は一時、経営上の選択と集中という文脈で「社内のシステム開発に投資するのはやめた方がいい」という議論が行われた時期もあるんです。すると、みんなの仕事が膨らんでいき、組織もどんどん膨らんでいって……ということがありました。そのタイミングで、DXチームがいろいろな場所で「何時間削減できました」みたいな話をし始めたのもあって、社内の方々が興味を持っていただいた面があります。

経営陣の姿勢も大きく変わったなと思います。例えば、入社すぐのミーティングでは私の提案にあまり興味がなさそうだったRENOSYマーケットプレイス事業の担当役員が、いつ頃からか、会うたびにお礼を言ってくださるようになったり(笑)

AI Strategy Centerではこの数年間、これまでにやってきたことを見直しつつ、初心に戻り改めて現場の方々の役に立つための開発をやっていこうと取り組んできました。今後もその姿勢を大切にして、難しかったことを簡単に、不可能だったことを可能にする研究開発にチームで邁進していこうと思います。


撮影:今井淳史
ライター:瀬良万葉

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