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「データの力で、GAグループ全体の意思決定の精度とスピードを加速させる」 GAテクノロジーズ新執行役員・奥村純就任インタビュー

2024年3月5日、株式会社GA technologies(GAテクノロジーズ)の執行役員 CDO(Chief Data Officer)に、奥村純が就任しました。

※プレスリリースはこちら

今回の記事では、奥村の経歴や就任の背景、そして今後の目的・意気込みについてインタビュー形式でお届けします。

Profile

奥村 純(Jun Ernesto Okumura)
2014年、京都大学大学院理学研究科で博士号(理学)を取得。在学中は日本学術振興会特別研究員(DC1)として国内外で宇宙物理学の研究に従事。その後、大手インターネット関連事業会社にてデータアナリスト・AIプロダクトマネージャーを歴任。多くのインターネットサービスにて、KPIマネジメントやデータプロジェクトをリード。国内外カンファレンスでの多数の登壇や執筆・翻訳活動、AIコミュニティ運営を行っている。2019年株式会社エウレカに入社し、2020年に執行役員Data Directorに就任。2024年、株式会社GA technologiesに参画。

宇宙物理学からデータサイエンスへ

 学生時代は宇宙物理学を研究されていたということですが、 そこからデータアナリストのキャリアを選択されました。

子どもの頃から天文学者に憧れ、大学では宇宙物理学を専攻しました。宇宙物理は扱う技術が広い学問ですが、私はその中でも、統計やデータ解析を専門的に活用していました。

転機となったのは、博士課程でアメリカに研究留学した時です。たまたまシリコンバレーの近くにあるバークレーという場所に滞在していたのですが、そこで先進的なサービスに関わるさまざまなエンジニアと知り合う機会に恵まれました。 当時はデータサイエンスという言葉が広がり始めていた時期で、研究で使っているような知識をWebサービスや人の行動分析に応用することで、多くの可能性につながることが非常に面白いと思いました。関わっていた大きな研究プロジェクトにも区切りがついたタイミングで、子どもの頃に憧れていた宇宙の研究で成果を出せたこともあり、「データという武器を中核にビジネスに関わってみよう」と次のチャレンジを決断しました。大学院で博士号を取得し、その後はDeNAに入社しました。

ー DeNAではどういったことをされていたのですか?

データアナリストとして、最初は主にモバイルゲームの分析などをやっていました。その中で「事業のためには何でもやる。目の前に落ちている仕事は、とりあえず何でも拾っていく。」というマインドが強くなり、徐々にゲームデザインやマーケティングなど自分の関わる役割を広げていきました。最終的に20タイトル以上のゲームに携わりましたが、いくつかの事業ではV字回復にも貢献し、データを活用して事業を成長させることのやりがいを学ぶことができました。

また、当時はAIの領域でも深層学習の技術が盛り上がりを始めていた頃で、近しい領域の研究をしていたことから、AIエンジニアやAIを活用した事業のPdMとしてもキャリアを広げていきました。当時からDeNAはゲームだけではなく、モビリティなどリアルの世界にテクノロジーを活用する事業もありましたので、 全体的なAIの戦略立案にも関わる機会がありました。

ー 世界初となるゲームAI導入のプロジェクトも担当されたそうですね。 

当時、自分が関わっていた対戦ゲームで、 「AIが人間の打ち筋や行動を模倣しながら、人間のように振る舞う」という技術を導入するプロジェクトを主導しました。 大きなユーザー規模で深層学習を本格的に使っている事例が話題になり、国内だけでなく海外のカンファレンスでも話をさせていただきました。その頃から、日本のゲーム開発者の大規模カンファレンスへの登壇も増え、ゲーム業界の著名な方々と「ゲーム×AIの未来」について盛り上げていく機会が増えました。社内の活動のみにとどまらず、「業界全体でAIに取り組んでいく」というテーマに関心を持ちながら会社の垣根を超えた活動に興味を持っていましたし、今でも当時の活動をしていてよかったなと感じる場面も多いです。

ー その後、2019年にエウレカに入社されますが、その経緯について教えてください。 

DeNAではデータ分析やAI開発の責任者という立場で、 さまざまなデータプロジェクトを担当してきました。ただ、次第に私のモチベーションが、技術だけではなく「自分が頑張ることで、どれだけ会社の事業成長に貢献できて、どれほど世の中をよくできるか」というアウトカムに向いていくようになりました。AIエンジニアの組織づくりを通じて優秀なメンバーをリードしたり、進め方がなかなか難しいAIプロジェクトを、プロダクトチームや経営陣との翻訳者のような存在になって間を繋いでいくほうが、 自分が出せる最終的な価値が大きくなると感じるようになっていったんです。

そこからマネジメントキャリアに興味を持つようになったのは、すごく自然な流れでした。データ組織全体のマネジメントや、企業経営におけるデータ活用戦略の観点から企業成長に向き合いたいと考え、 データディレクターという立場でエウレカへ転職しました。 エウレカでは、インターネットの世界から飛び出して、現実に生きている人々の相性やマッチングという領域に踏み出すこともでき、非常によい経験になりました。

組織全体から感じた、「変革」への強い覚悟

ー そこからまたさらに、GAテクノロジーズというこれまでとまったく業種の会社にジョインすることになりました。参画の決め手はなんだったのでしょう?

不動産や金融、そしてM&Aという分野は、私にとってまったく新しい領域です。ただ、代表の樋口さんと話をする中で、この会社がどんどん好きになりましたし、ここだったら自分が次のチャレンジをするのに非常に良い場所だと感じたのが、最終的にジョインを決断した理由です。

ー 具体的に、どういったところを良いと思われたんでしょうか。 

いくつかあります。まず1点目は、純粋に事業の面白さです。DeNAでは「インターネットの世界でどういう体験を生み出すか」に取り組み、エウレカでは、人と人との出会いや恋愛、結婚といった「よりリアルな世界にデータを取り入れる」経験をしました。 GAでは、過去の経験とは違い、「不動産というこれまで以上にリアルな世界とテクノロジーをどう掛け合わせるか」という領域が、まだまだ未開拓で面白そうだと思ったのが1点目です。

2点目は、 不動産というレガシーな業界を主な事業としながら、組織全体から「変革していく覚悟」を強く感じたことです。「リアルな事業にテクノロジーを入れたい」という会社は多いですが、実際は中途半端なDXになってしまったり、本質的な改革に至らないケースが多いと感じます。そんな中、GAグループでは経営陣をはじめ、関わるメンバーの全員から強い覚悟を感じる機会があり、「ここだったら自分の努力を社会に還元できる余地が大きい」という可能性を感じました。

3点目は、代表の樋口さんです。樋口さんは、前のめりで変革していこうとする人が多いGAグループという組織の中で、誰よりもハードワークをしながら、その変革にコミットしている方です。不動産領域でのデータ戦略は難易度の高いチャレンジだと認識していますが、このような頼もしい支援者がいる状態だったら、現実的に多くのチャレンジができると思ったのが、最終的に決断した理由です。

データ活用のための基盤をつくり、グループ全体の意思決定の精度、スピードを上げていく

ー 今後、 執行役員として取り組みたいことを教えてください。

GAグループには、多種多様な会社と事業がありますが、特定の事業、特定の部署にとどまらず、グループ全体としてしっかりデータを活用できるよう、まずはデータの基盤構築を進めていきます。専門的なデータ分析やAIに関係なくとも、出てきた数字やグラフを見て判断することは、ほとんどの人が普段からやっていると思います。しかしよくあることですが、部署によって使っているデータに差異があったり、そもそもデータの定義自体が違ったりすると、当然出てくる数字は異なります。そうなると会社として意思決定効率を下げてしまうことにつながってしまいます。ですからまずは、GAグループ全体として、データを活用するための基盤、 土台を作り上げたいと思います。

同時に、 データというのは大小さまざまな粒度の意思決定を支えるものなので、そうした意思決定のプロセス自体を改善していきたいと考えています。これは、IT業界が長年ノウハウを蓄積し、今後はよりリアルな領域で貢献できる部分だと思っています。どういう指標・データを追えば、事業が良くなり、お客様が満足していただけるかといったところから、現場の方々と協力してあるべきを設計していければと思いますね。

部門ごとに部分最適の数字を追いかけるのは決して悪いことではないのですが、 全体として見たときにうまく整合しない状態は、どんな企業でも必ず起こります。まずはその部分を整えることで、 職種・部門横断でデータを使った意思決定のプロセスを作り、判断の精度やスピードを加速させ、それによって優秀な社員が最速で目的地に到達できる状態を作っていきたいと考えています。もちろんこれは簡単に発言できるような難易度ではないのも理解しています。だからこそ、組織全体のカルチャーと連帯が大切になってきます。

また、これまでのキャリアでAIは専門的に取り組んできた分野ですし、AI関連のプロジェクトマネジメントも得意としている領域です。AISCとの協働によって、今以上にAIを事業に活用できる状態を目指したいですね。各事業とAIとの結び付きを強化していくというのも、今後チャレンジしていきたいことの一つです。

ただ、特定の部署というよりは、会社全体でいかにデータ戦略の絵を描いていくかという部分にまずはフォーカスして結果を出すことが、直近の目標です。これまで以上に、より経営としての目線から「経営×データ」の領域にチャレンジしていきたいと思っています。


撮影:今井淳史

※本記事は作成時点での情報を参考にしております。最新の情報と異なる場合がございますので、ご了承ください。


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